労働基準法(以下、労基法という)32条において労働時間の上限は、1日8時間、1週40時間と定められています。ゆえに、この時間内で職員の所定労働時間(※1)を設定する必要があります。
ちなみに、特例措置対象事業場といって1週44時間が認められる業種(クリニックや歯科等の保健衛生業)もありますが、動物病院は専門サービス業とされているため、原則の40時間が基準となります。
しかし、例外措置として変形労働時間制(1か月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の変形労働時間制)、フレックスタイム制、みなし労働時間制、裁量労働制などの制度があります。
本寄稿では、動物病院によく採用されている「変形労働時間制」の運用上のポイントに絞って解説します。
(※1:会社が定める労働時間)
それでは、具体的にみてみましょう。
動物病院での具体例
【A動物病院】
営業時間:9時~12時、16時~18時、18時~20時
定休:水・祝日
とあり、上記から職員の労働時間は下記のように推測することができます。
- 1日の休憩時間:4時間(12時~16時)
- 1日の所定労働時間:7時間
- 1週間の出勤:月・火・木・金・土・日(週6日勤務)
この場合、1日の所定労働時間は8時間内におさまっていますが、1週6日出勤となるため、42時間の所定労働時間ということになります。
これは原則の1週40時間を超過しているため、所定労働時間として設定することができません。
しかし、「1か月単位の変形労働時間制」を採用することで、適法に1週40時間を超えた設定が可能になります。
1か月単位の変形労働時間制とは、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間以内となるように、労働時間を設定することで、原則の1日8時間、1週40時間を超えることが可能になる制度です。
これにより業務の繁閑に応じて労働時間を効率的かつ合理的に配分することが可能になり、総労働時間の短縮も可能になるといわれています。
A動物病院のように週6日の勤務シフトを組む場合は、1か月単位の変形労働時間制を導入し、適法に1週40時間を超えた所定労働時間の設定が可能になります。
導入のポイントと留意点
就業規則または労使協定で必要事項について定め、労働基準監督署への届出が必要です。
必要事項は以下の通りです。
- 対象労働者の範囲
- 対象期間・起算日(1か月以内の設定/多くは1か月で賃金算定期間)
- 労働日及び労働日毎の労働時間
- 労使協定の有効期間
労働時間は対象期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えないように設定する必要があるため、その上限時間は1週間の労働時間×対象期間の歴日数÷7日によって計算された範囲内とする必要があります(図1)。
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