今回はJASMINEミニセミナーのご紹介です。腎泌尿器科より「急性腎障害」についてお話ししております。ここでは、動画の内容を概説いたします。
セミナーテーマ:急性腎障害(AKI)~はじめの一歩~
講師:JASMINEどうぶつ総合医療センター 腎泌尿器科 室卓志先生
急性腎障害の鑑別の仕方や初期の対応についてお話ししていきます。
急性腎不全と急性腎障害
似ているようで少し異なる、急性腎不全(ARF)と急性腎障害(AKI)についてご説明します。
従来、急激な腎機能低下を伴う病態が急性腎不全(ARF)と認識されていました。外傷、不適合輸血などが主な原因であり、そういった原因が除去されると腎不全の自然な回復が期待できるのが特徴でした。
しかし、2000年代になって治療の進歩により敗血症や多臓器不全に急激な腎障害が合併する頻度が増加し、予後が著しく悪化することが認知されるようになりました。この予後を改善させる目的で、急性腎障害(AKI)の概念が提唱されました。
AKIは、機能不全に陥るよりも早期、または軽症の時点でも死亡のリスクがあるため、早期診断・早期治療による予後改善を目的とした疾患の概念となります。
共に急激な腎機能障害を引き起こす病態ではありますが、ARFは基本的には腎機能低下を伴う病態であるのに対し、AKIは腎機能低下を伴う病態も含みますが、腎機能低下を生じる可能性のある急性の腎障害も含まれ、疾患スペクトラムの広い病態となります。
急性腎障害(AKI)の診断には医学領域における診断基準が用いられています。
また、獣医学領域ではIRISがAKIグレード基準を提唱しています。
診断基準の詳細については動画でご説明しています。
急性腎障害(AKI)の病期分類
AKIの病期分類は予後予測に有用とされています。
医学領域では、クレアチニンの基準と尿量の基準に応じてステージ1~3に分かれています。
獣医学領域における病期分類は、クレアチニンを中心にグレード1~5に分類され、尿量や腎代替療法の必要性によりさらにサブグレードに分類されます。