今回はJASMINEミニセミナーのご紹介です。循環器科より「心電図検査の基本」についてお話ししております。ここでは、動画の内容を概説いたします。
セミナーテーマ:心電図検査の基本
講師:JASMINEどうぶつ総合医療センター 循環器科 黒河内健太郎先生
1. 心電図の記録方法
体位、動物のポジションとしては、一般的には右横臥位で記録します。右を下にして横に寝かせた状態で保定します。電極の設置は、電極パットかワニ型クリップを用いるのが良いと思います。
また筋電図の混入を防ぐために安静時に記録することが重要です。落ち着いた状態で記録ができるように検査のタイミングを考えることも必要になります。
ノイズの混入に関して、動画では具体的なノイズ波形の例と合わせてご説明しています。
それぞれのノイズによってどういった特徴があるかを捉えておくと、実際うまく測れない場面に遭遇した時に解決方法が見えてきます。
2. 心電図波形の成り立ち
最初に刺激伝導系についてお話しします。
正常洞調律における心臓の活動電位は洞房結節、心房筋、房室結節、His束、プルキンエ線維、心室筋へと伝導していきます。
ペースメーカー電位とも言われる、いわゆる自動能の発生は、洞房結節、房室結節、His束、プルキンエ線維において認められます。
この自動能の発生興奮頻度は、犬では洞房結節で1分間に70から160回程度、房室結節-His束領域で40から60回、プルキンエ線維で20から40回程度認められるとされています。
またそれぞれの部位における伝導速度の特徴としては、洞房結節あるいは房室結節に関しては伝導速度が極端に遅い、またプルキンエ線維ではかなり早いということがわかります。
伝導速度の違いや自動能の発生は、それぞれの部位における活動電位の成り立ちの違いによって起こります。心房筋、左房筋などの作業心筋と呼ばれる心筋細胞においては通常静止膜電位で維持がされています。
特殊心筋と呼ばれる刺激伝導系の細胞では主にT型カルシウムチャネルによって緩徐脱分極相が認められます。
電極と記録される波形についても少しお話しします。
一般的に肢誘導心電図においては、双極誘導が用いられます。マイナス極からプラス極に向かう電気活動を陽性波として記録する方法です。
心電図波形で実際に記録される波形は、P波、QRS波、T波で成り立っています。
P波は心房筋の脱分極、QRS波は心室筋の脱分極、T波は心室の再分極をそれぞれ表しています。
双極誘導法においては、右前足に赤の電極、左前足に黄色の電極、左後ろ足に緑色の電極を置くことでI誘導、II誘導、III誘導、3つの双極誘導を記録しています。
動画では、双極誘導法について図を用いてご説明しています。
標準肢誘導心電図にはI誘導、II誘導、III誘導以外にも、aVR誘導、aVL誘導、aVF誘導があります。
心臓の中心からそれぞれの電極へと向かう波形を見ているのが増高単極誘導、それぞれの電極から電極へと向かう波形を見ているのが双極誘導、これらの誘導によって心臓の電気的なベクトルがどの方向に向かっているのかを観測していく流れになります。それによって平均電気軸を予測していきます。