今回はJASMINEミニセミナーのご紹介です。腫瘍科より「心臓腫瘍その1〜心基底部腫瘍」についてお話ししております。
ここでは、動画の内容を概説いたします。
セミナーテーマ:心臓腫瘍その1〜心基底部腫瘍
講師:JASMINEどうぶつ総合医療センター 腫瘍科 瀬戸口明日香先生
この動画は2020年9月7日に行ったミニセミナーの動画になります。
心基底部腫瘍に関する情報をpick upします。
心基底部腫瘍の診断
心臓腫瘍は、臨床症状はないことが多く、生前診断は難しいとされています。
心臓腫瘍は健康診断や術前検査のレントゲンや心エコーで偶発的に発見されるケースが多いです。
心エコーで腫瘤が見つかったら以下の腫瘍が考えられます。
心基底部腫瘍:ケモデクトーマ、異所性甲状腺癌
心臓腫瘍:血管肉腫(右房、右心耳に発生し、心内血栓との鑑別が必要です。)
心臓腫瘍の発生頻度は、心臓に腫瘤を呈した剖検例の約10%で、血管肉腫、ケモデクトーマ、横紋筋肉種、神経芽細胞腫などがみられます(文献データ)。
また、日本におけるデータについても、心臓腫瘍の発生頻度はそこまで高くないことが分かります。
生物学的挙動
ケモデクトーマは、ゆっくり大きくなる腫瘍で、腫瘍そのものによる症状よりも、腫瘍により心臓の内部が圧迫され、それによって機能障害が生じます。
異所性甲状腺癌では、一部に濾胞癌は浸潤性が強いものがあるとされています。
細胞および組織形態は、ケモデクトーマと類似していて鑑別は難しいとされています。
血管肉腫は、腫瘍からの出血による心タンポナーデを発症する例が多いとされています。
治療の選択肢
獣医領域では放射線治療と化学療法が主な治療法となります。
放射線治療は3DRTやSRTが実施されます。
化学療法は、トセラニブを第一選択とすることが多いです。
最近では、ドキソルビシンでも効果がみられたため、今後の治療法の選択肢として検討されています。
外科治療については数報の症例報告があるのみです。