個人事業主の方が法人化を検討するのはどのようなタイミングでしょうか。
一般的には、事業規模の拡大を考えるタイミングで法人化を検討することが多いですが、法人化することによるメリットについて、以下に記載します。
1. 税務上のメリット
(ア) 法人税率による納税
法人税率は、利益の金額が変動しても一定である比例税率制度を採用しているのに対して、所得税の税率は、所得の金額が増えると税率が上がる超過累進課税制度を採用しています。
したがって、所得金額が一定金額以上になると、法人税率よりも所得税率のほうが高くなります。
個人所得税の課税される所得金額は、合計所得金額から控除する項目が複数あるため、単純に比較することはできませんが、一般的には所得金額が8,000千円を超えるようになると、法人化を検討してもよいといわれております。
<参考>
普通法人の法人税率(資本金1億円以下の法人、一部例外あり)
所得金額 | 法人税率 | 実効税率(東京都) |
---|---|---|
年8,000千円以下の部分 | 15% | 25% |
年8,000千円超の部分 | 23% | 34% |
個人所得税の税率
課税される所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
~1,949千円まで | 5% | ― 千円 |
~3,299千円まで | 10% | 97.5千円 |
~6,949千円まで | 20% | 427.5千円 |
~8,999千円まで | 23% | 636千円 |
~17,999千円まで | 33% | 1,536千円 | ~39,999千円まで | 40% | 2,796千円 | 40,000千円超 | 45% | 4,796千円 |
(イ) 給与所得控除
個人事業主の方が法人化することによって、その方の所得の種類は、一般的に事業所得(個人事業主の所得)から給与所得(役員報酬)に変わります。
事業所得と給与所得との税務上の取扱いが異なることによって、税金計算上のメリットを享受することができます。
- 事業所得の金額の計算方法
- 事業所得の金額 = 総収入金額 - 必要経費 - 青色申告特別控除(65万円)
- 給与所得の計算方法
- 給与所得の金額 = 収入金額(源泉徴収前) - 給与所得控除の金額
個人事業を法人化した場合、個人事業で発生していた経費が全て法人の経費になりますので、法人の所得を「0円」にすると考えた場合、個人事業の総収入金額から必要経費を控除した金額を全て役員報酬として支払うことになります(実際は社会保険料が発生しますが簡便的に比較するためこの事例では未考慮)。
仮に総収入から必要経費を控除した金額が8,500千円だとすると税金の差額は概ね以下のようになります。